記事の詳細
広まるかディスポーザー(岐阜市)

シンク下で生ごみ破砕 広まるかディスポーザー
台所のシンク下に設置し、生ごみを細かく砕いて水と一緒に下水に流す「ディスポーザー」。家庭での使用を認める自治体が徐々に増え、十月一日には県庁所在地規模の都市としては、岐阜市が初めて一部地域で解禁に踏み切る。(白井康彦)
「全国の自治体などから注目されている」。解禁を前にこう話すのは、岐阜市の上下水道事業部営業課管理監の亀山孝雄さん。ディスポーザーはこの十年ほど、都市部の分譲マンションで少しずつ使われ始めている。マンション用は独自の排水処理システムを備え、粉砕された生ごみや汚水は処理槽での浄化後、公共下水道に流される。岐阜市は、以前から設置可能だった浄化槽付きに加え、今回、浄化槽のない直接投入型=図=も認めた。ただ、解禁地域を当面、市北西部処理区(対象約二万人)だけに限定。大きな問題が生じないか状況を確認してから、市全域に広げることを検討する。
直接投入型の価格は、工事費込みで数万~十数万円。設置した世帯は、一台につき月四百二十円の使用料金も市から徴収される。亀山さんは「実際にどのくらい設置してもらえるかは分からない」と話す。直接投入型を認めているのは現在、全国で十自治体ほど。最も普及に力を入れている自治体の一つが富山県黒部市だ。解禁したのは昨年四月。使用料金は無料とし、設置を申し出た市民に、市が一台三万円の補助金を出している。
今月二十八日までの申請者は約二百十人。市上下水道部長の小崎敏弘さんは「ディスポーザーによって、家庭ごみが減量できる。特に雪が積もる冬場のごみ出しが楽。ごみ袋にカラスがたかる問題の対策にもなる」とメリットを説明する。生ごみは台所の三角コーナーなどに置いた後、指定のごみ袋に入れ、週二回ほど収集してもらうのが一般的。ディスポーザーを設置すれば、台所が衛生的になり、生ごみ処理の利便性が増す。米国では、ディスポーザーが普通の家電製品のように売られている。直接投入型の解禁について、多くの自治体はまだ慎重。破砕された生ごみが直接、下水道の配管に流れ、環境へのマイナスが大きくなるとの懸念からだ。
下水道管には、雨水と生活汚水を別の管で流す「分流式」と、同じ管で流す「合流式」がある。 大雨のとき、生活汚水が未処理のまま河川に流れやすい合流式では、直接投入型の普及によって、河川汚染の程度が高くなる。岐阜、黒部両市は全域が分流式だが、大都市では今も合流式の地区が多い。破砕された生ごみが多く流れることで、下水の配管や処理施設が傷みやすくなることを心配する声も強い。
他方、ディスポーザーが普及すると、生ごみ中の水分の大幅減に伴い、生ごみを含む可燃ごみの焼却施設では、ごみ全体が燃えやすくなり、燃料を減らせるメリットも生じる。黒部市では今年五月、下水道などから出る汚泥を処理する最新装置が稼働した。メタン発酵槽で発酵・分解させ、発生したバイオガスを発電や足湯施設の湯沸かしに使う。岐阜市では昨年三月、下水汚泥の焼却灰から希少資源であるリンを回収して、肥料に加工する装置が動きだした。両市は、生ごみが下水処理施設に多く流れても、プラス効果があると強調する。
「ディスポーザーの強引なセールスが増える」「消費者のごみ減量への意欲がしぼむ」などの懸念もあり、自治体には慎重な検討が求められている。
2011年9月29日付 中日新聞記事より